生物学における永遠のテーマは進化か?

京都大学の研究成果のページを読んでいたら、とても面白かった。

鯨類の化学感覚能力の一端を解明

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/150304_1.html
ヒゲクジラ類という、イルカ的な生き物の中でもハクジラより早く進化的に分岐した種における、嗅球の形状を組織学および比較ゲノム学の両面から調査した論文。
結果、ヒゲクジラ類の嗅球には背側の領域が存在しないことがわかった。
2007年のNature誌で、坂野研が嗅球の背側領域を欠損するマウスを用いて、天敵や腐敗物のニオイに対する先天的な忌避行動を示さないことが報告されている。ヒゲクジラ類も、進化の過程でこうした忌避行動につながる嗅覚能力を失った可能性が示唆された。また、全ての現生鯨類は、甘味やうま味、苦味を感知するための遺伝子を失っていることがわかった。

つまりクジラ・イルカの類いは食べ物を食べても美味しいと感じることは無い、ということを示唆している。
それはどんな気分なのだろう。プランクトン食のクジラなら、まあ味がわからなくても別にいいか、となりそうだけど、イルカに関して言えば、魚を追うモチベーションはどこからくるのだろう。ひもじい、の一点なのだろうか。それはなんだか悲しい気がする。

しかし進化の過程で、背側領域から抜けていく(と言い切るのは語弊があるかもしれないが)というのは興味深い。
天敵や腐敗物のニオイを感知する能力を切り捨てて、視覚やエコーローケーション能力を発達させることで補っていったのだろうか。

紀伊半島におけるニホンザル苦味感覚の進化 -野菜や柑橘類の苦味をわからないサルが急速に拡散した-

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150723_1.html

ニホンザルでもPTC(フェニルチオカルバミド)に対する苦味を感じない個体がいることを発見された。「苦味感覚の退化がもたらす遺伝子の進化」という一見逆説的な現象が証明されたのははじめて、だそうだ。

本研究成果では(1)この変異遺伝子は機能的なタンパク質をつくらないこと(2)この変異遺伝子を持つ個体はPTCに対する苦味感覚が減弱していること、さらに、日本の17地域約600個体のDNAを用いた分子進化的解析により、(3)この変異遺伝子は紀伊半島西部の群れに限局していること(4)この地域では変異遺伝子が約30%の頻度をもつが、この現象は偶然には起こりえない、つまり適応的に変異遺伝子が広まったことが示唆された。

サイエンス番組でもよく「退化という進化」というテーマが扱われるが、これもそれの一つといえるだろう。データを見る限り、PTCが含まれると飲む水の量が減るということは、「嫌だ」と感じていることが示唆される。単純に考えて、苦い柑橘類でもかまわずガツガツ食べられるほうが栄養がとれるわけだから、それだけ生存に有利だろう。でもこういう問題の検証が、進化を扱う研究で難しいところなのかもしれない--つまり苦い柑橘類だらけの果樹園に普通のサルを放し飼いにして、自然とPTC非感受性の個体を出現を待つ、というアプローチは不可能に近い。研究グループは「似たような進化をした例がないか探索する」というのを今後の展開としているが、これが妥当な次の一手なのだろう。

他の感覚、たとえば視覚や嗅覚に関してはどうだろう。視覚だと色盲が思い浮かぶが、進化の過程で出現した遺伝子変異なのかどうか、研究された例はあるのだろうか?たとえばあえて色の情報をなくしてグレースケールにすることで、よりコントラストがハッキリ見えるようになる、といった進化的な「利点」があったりするのだろうか。

嗅覚に関しては、ある特定の匂いを「芳香」と感じるか「不快」と感じるか、匂い分子の受容体の遺伝子変異によって決まることが知られている。こういう現象にも選択圧がかかっていたりするのだろうか。おもしろいなあ。



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# by 5-gekkostate-3 | 2015-09-02 06:43 | 論文

おなかがすくと神経回路が変化する?

マックスプランク研究所は、ハエにおいて空腹が行動を変化させるだけでなく、神経回路を変化させることを発表した。この研究から、空腹は決断(decision making)に影響を与え、リスクの感度を変化させることが示唆された。

おなかがすくと機嫌が悪くなる。食事をちゃんと摂ることは機嫌だけでなくリスクを負う行動にも影響を与える。これは動物界に広く当てはまる現象だと考えられている。マックスプランク研究所において研究者らは、ショウジョウバエ Drosophilaにおいて、空腹は行動を変化させるだけでなく、脳における回路を変化させていることを示した。

動物の行動は、食事があるかどうかとか、食事の量は十分か、といったことに左右される。多くの研究から、動物が空腹の場合、リスクを負ってでも食べ物をとりにいくことが証明されている。この行動は、人間にも当てはまることが近年報告されている:ある研究によると、空腹な被験者はそうでない者より有意に金銭的なリスクをとるらしい。

さて、実験動物であるハエももちろん栄養状態に依存して行動を変化させる。彼らはごく低濃度の二酸化炭素を危険なシグナルとして感知することができ、逃げるために飛ぼうとする(実験室では二酸化炭素はハエの麻酔として使われる。)しかしながら、彼らの主なエサである腐った果物や植物もまた、二酸化炭素を出している。つまり、二酸化炭素を危険性のある物質と捉えるか、食べ物が周辺にあることを示唆する物質と捉えるか、脳は正反対の決断を常に下さなければならない。遺伝学に強いハエを用いて、行動だけでなく神経回路の変化が明らかとなった。

研究者らは、ハエを空腹なものと食べ物を十分与えられている群に分け、「二酸化炭素のみ」あるいは「二酸化炭素+食べ物の匂い」に晒した。この実験から、空腹なハエは二酸化炭素に対する忌避性が速やかに失われることが分かった。つまりハエにおいても、空腹時に食べ物を察知すると、リスクをとる傾向がある。では、このとき脳はどうなっているのか?

二酸化炭素を忌避する行動は本能行動であり、学習しなくても個体に備わっている。ところで、ハエの脳にある、キノコ体は学習や学習に関連した行動と関連しているとされてきた。しかし、研究者らが一時的にキノコ体の神経細胞を機能停止させると、空腹なハエは二酸化炭素に反応しなくなった。一方、満腹ハエでは、キノコ体の神経活動がない状態でも二酸化炭素を避け続けた。

さらなる研究によって、二酸化炭素の情報をキノコ体へと伝達する投射ニューロンが同定された。この神経細胞は空腹時にのみ忌避行動に重要で、空腹でないハエにとっては重要でないことがわかった。「エサを十分与えられたハエでは、キノコ体の外に存在する神経細胞を使うだけで二酸化炭素から逃げることができる。一方でおなかがすいたハエでは、キノコ体にある神経細胞が二酸化炭素の情報を伝達し、逃げることができる。キノコ体や投射ニューロンの活動がブロックされると、空腹なハエは二酸化炭素のことを心配しなくなってしまう」と本研究をリードした Ilona Grunwald-Kadowは説明する。

これらの実験の結果から、ショウジョウバエにおける二酸化炭素に対する本能行動は、ふたつの並列した神経回路によって制御されることがわかった。「おなかがすいているとき、ハエは【直通ルート】を使わず、バランスのとれた判断を下すために内外の情報を脳で処理するようになる、ということだろう」とGrunwald-Kadowはいう。「今後、どのように代謝過程や空腹が脳におけるプロセス機構に影響を与えるのかがわかれば面白い」

Publication: Lasse B. Bräcker, K.P. Siju, Nelia Varela, Yoshinori Aso, Mo Zhang, Irina Hein, Maria Luisa Vasconcelos, Ilona C. Grunwald Kadow, “Essential role of the mushroom body in context dependent CO2 avoidance in Drosophila,” Current Biology, 13 June 2013, DOI:10.1016/j.cub.2013.05.029

Source: Max Planck Institute


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# by 5-gekkostate-3 | 2015-08-26 10:21 | 論文

chromecastが繋がらなくなった

chromecastはテレビの音が出るし、ちゃんとしたオーディオのない現在の環境では重宝しているのですが、(海外生活なので一式揃えるのに躊躇します)急につながらなくなりました。

1. コンピュータ、テレビ、chromecastの再起動

それでもダメなら

2. ルータの再起動

大抵これでうまくいきます。

それでもダメなら

3. ルータの設定を変える
これは幸いまだやるに至っていません。



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# by 5-gekkostate-3 | 2015-08-25 10:39 | 一般

再投稿

さて。
サンディエゴに研究の拠点を移し、良いサイエンスをすべくいっそう精進する所存です。
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# by 5-gekkostate-3 | 2015-08-20 06:01 | 研究

今週のサイエンス

Sex Differences in the Gut Microbiome Drive Hormone-Dependent Regulation of Autoimmunity
Janet G. M. Markle1,2, Daniel N. Frank3, Steven Mortin-Toth1, Charles E. Robertson4, Leah M. Feazel3, Ulrike Rolle-Kampczyk5, Martin von Bergen5,6,7, Kathy D. McCoy8, Andrew J. Macpherson8, Jayne S. Danska1,2,9,*
Published Online January 17 2013
Science 1 March 2013:
Vol. 339 no. 6123 pp. 1084-1088
DOI: 10.1126/science.1233521

頻出のGut Microbiome、つまり腸内細菌を扱った研究。
『菌への曝露や性ホルモンは自己免疫疾患に大きな影響を与え、それらは女性で多く発症する。
研究グループは、若齢期における菌への曝露によって性ホルモンの分泌レベルが決まり、さらにI型糖尿病モデルマウスの自己免疫の進行が調節されることを明らかにした。
片利共生型の菌が定着することによって精子のテストステロンの分泌レベルが上昇し、I型糖尿病になるのを抑制した。
さらに、成獣オスから若齢期メスへとgut microbiotaを移すと、メスのmicrobiotaが変化し、テストステロンの増加や代謝の変化が見られた。また膵島での炎症や自己免疫抗体の産生が抑制され、I型糖尿病への防御が見られた。これらの効果はアンドロジェン受容体活性に依存していた。ゆえに、片利共生型の菌は性ホルモンのレベルを変化させ、遺伝的リスクの高い自己免疫疾患の予後を決定することが明らかになった。』
Editor's summaryでは
『自己免疫疾患のなりやすさに関与するものとして、遺伝的素因と環境要因の2つがある。しかしどのような環境要因が影響しているのか明らかではなかった。研究グループはマウスモデルを用いて、microbial factors、とくにgut microbiotaがどのように自己免疫疾患のなりやすさに影響を与えるか調べた。non-obese diabetic (NOD)マウスモデルにおいて、メスのほうがオスに比べ有意に病気にかかりやすかった。しかしこの差はgerm-freeな環境では見られなかった。
そこでオスNODマウスにおける盲腸内容物をメスに移したところ、I型糖尿病への防御を示唆するデータが得られ、これはメスにおけるテストステロンの増加と関連づけられた。アンドロジェン受容体活性をブロックすると、protectiveな効果が失われた。』
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# by 5-gekkostate-3 | 2013-03-05 21:43 | 論文

ハエの研究はどんどん進みますね

Glial-Derived Prodegenerative Signaling in the Drosophila Neuromuscular System

ハイライト
→Drosophila NMJにおけるグリア由来のprodegenerative signalingの発見
→TNF-αは末梢のグリアに発現しており、neuromuscular degenerationに必要
→TNF-α受容体は運動ニューロンに発現しており、NMJ degenerationに必要
→ミトコンドリア依存的なシグナリングがprodegenerativeなメカニズムに働く

Summary

研究グループはDrosophilaのneuromuscular systemにおけるprodegenerative, glial-derived signalingを発見した。このシグナリングはcaspaseやミトコンドリア依存的なシグナリングを含む。
まず明らかにしたことは、Drosophila TNF-α (eiger) がperipheral gliaのsubsetに発現しており、
TNF-α receptor (TNFR), Wengen,が運動ニューロンに発現していること。
次にNMJ degeneration(spectrin/ankyrin 骨格を奪う?ことで惹起される)はperipheral gliaにおけるeiger変異体やeiger knockdownによって抑制される。さらに運動ニューロンにおけるwengen欠損によっても同様の抑制がみられたので、glia由来のprodegenerative TNF-α signalingの存在が示唆された。
JNK 、NFκβ のいずれもprodegenerative signalingに必要ではなかった。しかし、initiator caspaseであるDroncやeffetor caspaseであるDcp-1、ミトコンドリア依存的なシグナリングが関与していることを突き止めた。軸索や軸索末端にミトコンドリアがいないような変異体ではdegenerationが抑制され、これはDrosophila Bcl-2 (debcl, mitochondria-associated protein)や Apaf-1 (dark、ミトコンドリアシグナリングと他のシステムのcaspase活性とを結びつける)の変異体と同様であった。
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# by 5-gekkostate-3 | 2011-12-09 10:59 | 論文

分野違いではあるけれど

HSPG Modification by the Secreted Enzyme Notum Shapes the Wingless Morphogen Gradient
Antonio J. Giráldez, Richard R. Copley and Stephen M. Cohen*

分泌タンパクWinglessはDrosophilaのimaginal discのパターンを形成するmorphogenとして機能する。研究グループはWingless活性を抑制する新たな分泌タンパクNotumを同定した。
Notum機能欠損によりWingless活性は上昇し、このときWinglessタンパクの濃度勾配を変化させている。過剰発現すると、NotumはWingless活性をブロックする。Notumはα/β-hydrolase superfamilyのメンバーをコードしており、pectin acetylesterasesに近い.
さらにNotumは、HSPGであるDally-likeとDallyをmodifyすることでWinglessタンパクの分布に影響を与えることが明らかになった。また、Winglessシグナリングレベルが高いとNotum発現が誘導される。
これらのことから、Notumの発現を制御することで、Winglessは自身の濃度勾配を形作ることがわかった。
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# by 5-gekkostate-3 | 2011-12-08 18:45 | 論文

zebrafish, hspg

Assembly of Lamina-Specific Neuronal Connections by Slit Bound to Type IV Collagen
Tong Xiao1, Wendy Staub1, Estuardo Robles1, Nathan J. Gosse1, Gregory J. Cole2, Herwig Baier1, 3

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脳における特定のニューロン結合メカニズムはこれまでに多くの研究がなされている。
ゼブラフィッシュでは、RGCの軸索は中脳tectum neuropil中の(最低)6層に投射する。
それぞれの軸索はtarget layerの1つに単一の平らなarborを形成しtectal neuronのdendriteとシナプスを形成する。
研究グループはretina-tectum結合の層特異性はRGC軸索でのself-sorting interactionに依存しないことを明らかにした。むしろ、tectum由来のSlit1が、軸索のRobo2を介してtarget layerにneuriteを誘導することがわかった。
さらに遺伝学的・生化学的研究によりSlitはIV型コラーゲンであるDragnet (Col4a5)と結合する。Dragnetはtectum表面の基底膜を形成する。
また研究グループはradial gliaのendfeetが、Slitを基底膜にアンカーするのに必要であることを明らかにした。
これらの結果から、Slit1 signalingは表面ー深部勾配を形成し、伸長しつつあるretinal axonに層状の位置情報を提示しているのではないか?といったことが示唆された。
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# by 5-gekkostate-3 | 2011-12-06 13:53 | 論文

線虫モデル

Axon Regeneration Pathways Identified
by Systematic Genetic Screening in C. elegans

Neuron, 2011

神経軸索が損傷後ふたたび伸長するメカニズムを分子遺伝学的に説明する知見はほとんどない。研究グループは線虫機械受容ニューロンでのレーザー損傷モデルを用い軸索再生を制御する654の遺伝子をスクリーンした。
そこでこのグループは軸索再生を促進したり抑制したりする機能的なgene clusterをみつけた。
そのなかには、axon guidanceに影響をおよぼすことが知られているもの、membrane excitability (?), neurotransmission, synaptic vesicle endocytosisに関わるものなどが含まれていた。Arf Guanine nucletide Exchange Factor (GEF), EFA-6は軸索のregrowthを抑制する。
遺伝学とin vivo imagingを組み合わせて、EFA-6はmicrotubule dynamicsを介してregrowthを抑制することを示し、しかもこれはArfのGEF活性に依存しないことが明らかになった。
あらたに同定されたregrowth inhibitorの中で、EFA-6の機能欠損のみがDLK-1 kinase必要性 (?)を回避した。
このようなpathwayの同定によって、軸索損傷の反応や修復の遺伝学的な基礎の理解が深まるだろう。
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# by 5-gekkostate-3 | 2011-11-30 21:08 | 論文

ハエHSPG

Cell Type-Specific Requirements for Heparan Sulfate Biosynthesis at the Drosophila Neuromuscular Junction: Effects on Synapse Function, Membrane Trafficking, and Mitochondrial Localization

The Journal of Neuroscience, 1 July 2009, 29(26): 8539-8550

Drosophilaを含むあらゆる種において、HSPGはneuromuscular synapseに蓄積している。
研究グループはheparan sulfate合成やsulfationをブロックするDrosophila変異体を用いることで、neuromuscular junctionにおけるHSPGの生理機能を明らかにした。
作出された変異体ではシナプスの生理学的・形態的異常が見られたことから、HSPGはpresynaptic・postsynaptic両方で機能することが示唆された(これらの異常は適切なtransgene発現によってレスキューされた)。
特に興味深かった点が、ミトコンドリア局在の異常、骨格筋におけるGolgiやER marker分布の異常、運動ニューロンにおける刺激依存的なendocytosisレベルの上昇である。
これらのデータから、HSPGの機能は細胞表面やmatrix環境に限ったものではなく、membrane trafficking やオルガネラ分布などの広範なcellular processにも及んでいることが考えられる。
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# by 5-gekkostate-3 | 2011-11-28 13:42 | 論文

筋細胞の転写因子

Nfix Regulates Fetal-Specific Transcription in Developing Skeletal Muscle
Volume 140, Issue 4, 19 February 2010, Pages 554-566

Skeletal myogenesis(骨格筋の出来かた)は2段階になっていて、最初期にはembryonic、そのあとfetalができるといわれている。それぞれの筋細胞は異なる細胞種で、異なる遺伝子を発現している。(同じ筋細胞でも途中から別物に変わるというのが面白い)。このひとたちはtranscription factor nuclear factor one X (Nfix)という転写因子がPax7によって活性化して、fetalの遺伝子プロファイルを発現させて(ON)、これまでのembryonicなプロファイルを抑制する(OFF)するスイッチ的な役割を果たすことを見つけた。


fetal...MCK and β-enolase
embryonic...slow myosin

MCK promoterにかんしては、NfixはPKC θとcomplexを形成し、MEF2Aと結合しリン酸化し活性化する。たとえば、embryonicな筋細胞にNfixを強制的に発現させるとfetal様になり、fetalに特徴的な遺伝子プロファイルを発現するようになる、など。culture系だけでなく、個体でも見ている。

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単純な話だけどきれいな証明なのでcellに載せられたんでしょうか。いいなあ。
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# by 5-gekkostate-3 | 2010-04-29 11:49 | 論文

水曜日

実験はどれもうまくいかず胃が痛くなってしまった。
帰宅して風呂にゆっくり浸かり、ヨーグルトをたべたらすっかり元気です。

今日はOと助教の論文読み会がありました。
Oは神経栄養因子の軸索末端からの取り込みについて。
BDNFと受容体のTrkBは結合して、軸索を介して生存シグナルが輸送されることが知られていますが、BDNFに巨大なビーズをつけ、とりこめないようにした実験で、TrkBが単体で生存シグナルを輸送しうることは照明されました。でも生理的な条件下で、複合体を形成して輸送されているのか、この論文からではわからなかった。

自分はES細胞から単一のneuronal progenitor cellをつくってneuronに分化させたという報告と、それを利用したaxon degenerationモデル、またaxonal degenerationをひきおこす分子の探索。
galectin-1という分子をみつけて検討していました。

助教は神経栄養因子シグナリングが脳においてどの時期に依存しているかの報告。
BDNFノックアウトマウスはふつう生後すぐ死亡してしまうが、まれに数日間生きる個体がいて、それを用いた脳での検討。脳でもアポトーシスによって神経細胞が減っていた。
もうひとつは脳梁をまたぐような神経線維をもつneuronをとってきて培養して、神経栄養因子の依存性を検討。胎生19日目までと生後数日で、大きく異なっていた。まず形態的に、胎生19日目までは四方に突起をのばすものの、生後数日のものでは1本しか延びない。極性の問題か。そして胎生19日目までのneuronでは神経栄養因子による生存の促進は見られなかったが、生後数日では顕著にその効果が現れた。
やはり発達的にみても下位ニューロンのほうが先だから、栄養因子の依存性もそれだけ早いということなのだろうか。
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# by 5-gekkostate-3 | 2010-03-11 01:40 | 論文

iN細胞

未読ですが。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100128-00000017-mai-soci
体細胞を直接神経細胞にできるのか。。
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# by 5-gekkostate-3 | 2010-01-29 09:47 | 論文

synapse elimination

Mechanism of synapse disassembly at the developing neuromuscular junction
Nguyen,Q.T.; Lichtman,J.W.
Curr.Opin.Neurobiol., 1996, 6, 1, 104-112, ENGLAND

ほ乳類の発生途上の神経系では、シナプスの形成/消失が繰り返されている。こういったシナプスのリモデリングによって、軸索が、ある標的に対しては結合を強め、別の標的に対しては完全に撤退することを可能にしている。その代表的な例が、複数の軸索による神経支配から単一の軸索による神経支配へと移行することである。この神経支配の消失は、同じjunctionを支配している軸索間の長期にわたる競争によって引き起こされると考えられる。シナプスの活動は同期しておらず、こういった差が競争のもとになる可能性がある。また、シナプスの活動とは関係なくシナプスが失われることもある。シナプスの活動依存的/非依存的なシナプスの消失をみていくことで、発生期におけるシナプスの再構築のメカニズムが明らかになるだろう(今後に期待。)

Rapid synapse elimination after postsynaptic protein synthesis inhibition in vivo.
McCann CM, Nguyen QT, Santo Neto H, Lichtman JW.
J Neurosci. 2007 May 30;27(22):6064-7

シナプスを維持するのにretrogradeなシグナルがどのような役割を果たすのか調べるため、標的骨格筋での蛋白質合成をin vivoで阻害し、軸索末端においてどうなるか、そのようすをモニターした。12時間以内に、軸索末端は萎縮し、正常な後シナプス部位から退縮し始めた。これは正常な発生におけるシナプスの消失と構造的に似ていた。このことから、標的骨格筋由来の、寿命の短い何らかの因子が、adultではシナプスの維持に働き、発生時にはsynapse eliminationを制御すると考えられる。

因子の候補としては栄養因子、protease inhibor、接着分子か?
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# by 5-gekkostate-3 | 2010-01-06 14:49 | 論文

論文など

ざっと見て、とにかく知識を頭に入れることを優先することにする。

Agrin promotes synaptic differentiation by counteracting an inhibitory effect of neurotransmitter
11088-11093 PNAS August 2, 2005

agrinとアセチルコリン(ACh)の、NMJ形成に及ぼす影響について。
agrin ノックアウトマウスはNMJが維持できない。いっぽう、AChが産生されないChATノックアウトマウスではNMJはたくさん(extensively)できる。
ここでagrin, ACh両者が存在しないダブルノックアウトマウス(dko)を作製しNMJの形成を見たところ、NMJは形成されていた。細胞でも同様の結果。
一連の結果から、
→AChは発生期のpostsynaptic siteを不安定化させる
→そしてagrinはAChのもつ「antisynaptogenic」な影響に対抗している
※dkoで完全にレスキューされたかというとそうでもなく、AChRに届いていないfiberがあったり、逆にひとつのfiberが複数のAChRを支配していたりする。
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# by 5-gekkostate-3 | 2010-01-01 21:01 | 論文

論文を読む時間ができた

natureから、myogenic progenitor cell関連を2報。
いまだに謎が多い、筋肉の幹細胞について。

A Pax3/Pax7-dependent population of skeletal muscle progenitor cells
nature Vol 435|16 June 2005

 脊椎動物の発生の途上では、胎生期のmyogenesisのphaseにしたがって、骨格筋の形成・成長が促進される。最初期の胎生期の筋細胞のoriginや、それが分子メカニズム的にどのように制御されているのかはよく研究されているが、その後のmyogenesisに関してはよくわかっていない。
 このグループは「Pax3, Pax7(転写因子)は発現するが、骨格筋特異的マーカーを発現しない」という新しい細胞のpopulationを同定した。これらは発生期を通じて胎仔の胴や四肢の筋において、分裂増殖する種として維持される。研究グループはPax3レポーター(GFP)を用いることで、これらのpopulationは骨格筋の前駆細胞であり、その後myogenicになり骨格筋を形成することが明らかになった。発生後期には、これらのpopulationが生後の筋に特徴的なsatellite cellとなる。
 Pax3, Pax7をともに欠損したマウスの筋では、ある程度までしか発達しなくなってしまい、発生初期の筋だけが形成される。Pax3 or Pax7を欠いた細胞は死ぬか、あるいはmyogenicな運命をたどらない。
 結論として、Pax3/Pax7依存的なresident前駆細胞のpopulationはmyogenicな細胞を形作り、骨格筋の形成に重要である。


これは胎生期の話で、adultのsatellite cellでもPax3/Pax7は機能発揮に重要なのかはつい最近まで検討されておらず、それをやったのが次の論文で、予想外の結果が出ています:

Adult satellite cells and embryonic muscle progenitors have distinct genetic requirements
nature Vol 460|30 July 2009

 ほ乳類筋前駆細胞がもつmyogenicなpotentialや自身の生存、成長はPax3やPax7に依存している。(胎生期にはPax3&Pax7, 出生直後にはPax7のみ。)しかしこういった研究はin vitroでしかやられてきておらず、in vivoでの検討はされてこなかった。
 そこで研究グループはinducible Cre/loxP lineage tracingとconditional gene inactivationを組み合わせ、前脛骨筋でmuscle regenerationの検討を行った。具体的には、tamoxifen-inducible Cre recombinase-oestrogen受容体というfusionタンパクを発現するアレル(Pax7もつぶしてある)をもったマウスと、Creの発現依存的にPax7 nullとなるようなアレルをもったマウスをかけ合わせる。これによって、tamoxifenを投与するとCreが発現し、Pax7 nullとなる。このようなピタゴラスイッチ的な仕組みによって、「胎生期ではPax7が発現しているが、adultではPax7が欠損する」ということが可能になり、胎生期でのPax7欠損の影響を回避できる。
 予想外なことに、adultマウスでPax7が不活性化されても、そのsatellite cellはcontrolと同様にmuscle regenerationの機能を果たした。Pax7発現のないこれらのsatellite cellは分裂増殖することができ、sublaminalな定位置を占めることもできる。またさらなるregenerationにおいてもサポートすることができる。さらに、Pax3とPax7を同時に不活性化させても、やはり正常なmuscle regenerationが起こった。様々なtime pointでPax7を不活性化させたところ、Pax7は前駆細胞がquiescenceになるjuvenileな時期までしか必要ではないことが明らかになった。またin vitroで、前駆細胞がadult satellite cellへ移行するときのPax7依存性は、cell-autonomousに変化することがわかった。
 結論として、embryonic→juvenile→adultと個体が成長するにつれて、muscle stem cellはそのgenetic requirementを変えていく。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-12-29 20:48 | 論文

木曜日

セミナーで良い質問ができるように、ただ漫然と読むのではなくて書評というか、コメントを書いてみます。

the liprin protein SYD-2 regulates the differentiation of presynaptic termini in C. elegans

nature vol401 23 sep 1999

シナプスではpre/ post双方の細胞表面下でspecializeされた構造体がつくられる。
presynapticな先端にはactive zoneと呼ばれる電子密度の高い構造体があって、vesicleのドッキングや放出を行う。このactive zoneは何で構成されているのか、どのようにしてできるのかなど明らかになっていない。

研究グループは線虫のsyd-2変異体を解析したところ、いくつかのpresynapticタンパクやGFP markerの局在が分散してしまった。(そもそもsynaptobrevinの線虫ホモログ::GFPのスクリーニングでsyd-2がとれてきた)
 →syd-2 mutantのactive zoneは長く伸びる(電顕)
 →しかし、1シナプスあたりのvesicle数は野生型と変わらない
 →synaptic transmissionはややimpaired

syd-2遺伝子産物はliprinと相同性が高い。
liprinはRPTR(recptor proteins with tyrosine phophatase activity)という蛋白質と相互作用する。
SYD-2蛋白質はvesicleの存在と関係なくpresynaptic terminiに局在、cell autonomousに機能発揮。

SYD-2の機能は「シナプスにおけるRPTPシグナリングの細胞内アンカーとして、active zoneを形成する」ことなのではないか?と主張。



SYD-2というタンパクが見つかった初めての報告か。syd-2 mutantで見られたSNB-1::GFPの分散した構造をどう解釈するか?vesicle distributionそのものが変化してしまったのか、SNB-1::GFPとplasma membraneとのassociationが変化してしまったのか。
ただtransmissionがおかしくなっているのでvesicleがあってもactive zoneの形成に不具合が生じているのは確か。
あとRPTPというのを全然しらなかったのでピンと来ませんが、どうもこの時点ではくわしくわかってなさそうでした。

うわーすごい時間かかってしまった。これは続かなさそう・・・
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-10-15 23:38 | 論文

読み会(二人目)

Killers、かっこ良い。いまさらですが。


SYD-1, a presynaptic protein with PDZ, C2 and rhoGAP-like domains, specifies axon identity in C. elegans
Nature Neuroscience 5, 1137 - 1146 (2002)

発生期の神経においてaxon/dendriteがどう決定されるのか、という話だと思います。
線虫はよくわからない・・・

 神経軸策のidentityは神経前終末側の特殊化(specialization、ピンとこない言葉)によって決定される。
 C.elegansのsyd-1遺伝子のloss-of-function変異
→GABA陽性のMNにおいて、axon限定なはずの「神経前終末側の特殊化」がdendriteでも起こってしまった。(発生初期)
→しかし発生後期における極性転換?(polarity respecification)にはsyd-1は必要ではない

あとは機能発揮に必要なドメイン探し。
 SYD-1タンパクはPDZ, C2, rho-GAP-likeドメインをもち、mature neuronでは神経前終末に局在。
 rhoGAPドメインを欠いたSYD-1→neurite outgrowth/guidanceを阻害。

syd-1は極性の獲得時におけるaxon identity決定に関わるのではないか。



abstractだけ訳しても何が何だかわからないけれど。
あとこれもおもしろそうだった。ゼブラフィッシュのstudyぽい。
Nature Neuroscience 4, 1093 - 1101 (2001) Visualizing synapse formation in arborizing optic axons in vivo: dynamics and modulation by BDNF
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-10-13 23:21 | 論文

読み会

Rapamycin activation of 4E-BP prevents parkinsonian dopaminergic neuron loss
Nature Neuroscience 12, 1129 - 1135 (2009)

パーキンソン病の話。
常染色体劣性のパーキンソニズムはPINK1やPARK2の変異によって引き起こされ、ドパミン神経の脱落などがその特徴である。

研究グループは、治療につながりそうなpathwayを探すためDrosophila parkとPink1と遺伝学的にリンクしているファクターを同定した。
→translation inhibitorであるThor (4E-BP)がみつかった
→Thor の過剰発現により病理を反映するphenotypeがすべて抑制された(ハエ)

4E-BPはTOR inhibitorであるrapamycin (TOR =Target Of Rapamycin)により活性化
→Pink1変異体やpark変異体のpathologyをある程度抑制(ハエ)、
→PARK2変異をもつ患者由来の細胞においてミトコンドリアの障害も改善

話は変わって、「4E-BPはLRRK2優性変異により抑制される」ことを受けて
LRRK2 ハエホモログのknock down?→4E-BPが活性化、Pink1変異体やpark変異体のpathologyも抑制できた

4E-BPをうまく調節してやればパーキンソニズムの治療に使えるかもしれない。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-10-13 22:43 | 論文

CCM2 Mediates Death Signaling by the TrkA Receptor Tyrosine Kinase

ひさしぶりにちゃんと一本読んだ。

CCM2 Mediates Death Signaling by the TrkA Receptor Tyrosine Kinase
Neuron, Volume 63, Issue 5, 585-591, 10 September 2009

NGFの受容体にはTrkAとp75があって、p75がもっぱら神経細胞死をひきおこすと考えられていた。
しかし、近年TrkAも細胞死をひきおこすことがわかった。そのメカニズムは不明だった。

レポータースクリーニング(だったか)の結果CCM2という、脳形成の異常に関連する遺伝子産物がTrkAと相互作用してNGF-dependentなapoptosisをひきおこすことが明らかになった。
さらに欠損体やmutantを用いて、TrkA/CCM2のどの部位が結合に必要で、どの部位が細胞死シグナリングに関係するのかを調べた。
その結果、CCM2はTrkAの膜近傍のphosphotyrosine binding domain (PTB)を介して結合していることがわかった。さらにPTB domainはTrkAと特異的に相互作用するのに必須で、Karet domain (CCM2のもうひとつのsubdomain)は細胞死のシグナル経路につながっていることがわかった。

最後に、ヒト髄芽腫や神経細胞芽腫といった小児癌由来の細胞でCCM2とTrkAを導入するとその細胞の生存率が低下する(たくさん死ぬ)ことがわかった。
これに関連して、じっさいの神経細胞芽腫の患者において、CCM2/TrkAの発現レベルと患者の生存率の関係を調べてみた。統計調査の結果、CCM2/TrkAの発現レベルが高いと生存率が高まることがわかった。(このへんうろ覚え)


ということでスクリーニングから始まりシグナリングを明らかにして細胞、さらにヒトへ、とかなり盛りだくさんでした。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-09-26 01:03 | 論文

BDNF関連

Neuronal release of proBDNF
Nature Neuroscience 12, 113 - 115 (2009)

proBDNFと成熟したBDNFは異なる受容体と結合する。これにより、多様な神経活動を可能にしている。
内因性BDNFのisoformを定量する技術を利用して、マウスのニューロン(どのニューロン?)はproBDNFとmatureBDNFの両方を分泌(secrete)することが分かった。
proBDNFとp75の発現レベル(?)はperinatalの時期にもっとも高く、その後adultでは減少するが依然として検出は可能という。
このことから、BDNFの活動は「proBDNFあるいはmature BDNFの分泌」、「p75やTrkBのローカルな発現」により制御されていることが明らかになった。

うーん。アブストだけ読んでもどういう実験をしているのかイメージできない…。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-09-06 09:42 | 論文

APPの生理機能

最近の話題。

Presynaptic and Postsynaptic Interaction of the Amyloid Precursor Protein Promotes Peripheral and Central Synaptogenesis
The Journal of Neuroscience, September 2, 2009, 29(35):10788-10801

アルツハイマー病(AD)におけるAPPの役割は知られているが、APPの生理的な機能は良く分かっておらず、議論が続いている。
研究グループは以前、「APPはneuromuscular synapseを媒介し発達させるのに必要である」という報告をしている。今回はAPPをpresynaptic motor neuronあるいはpostsynaptic muscleコンディショナルに欠損させたマウスを作出し、 これらのalleleをAPLP2-null backgroundに掛け合わせた(いずれかでレスキューされることを期待)。
予想外にも、pre/postいずれの部位においてAPPを不活性化しても germline deletionに似たneuromuscular synapseの障害が見られ、postsynapticのAPPはhigh-affinityコリントランスポーターのpresynaptic targetingやsynaptic transmissionに必須であることがわかった(?)。HEK293細胞と海馬由来の初代培養神経細胞とのmixed-cultureアッセイを用い、HEK293細胞にAPPを発現させると、HEK293細胞とcontactしている軸索でsynaptogenesisが促進されることがわかった。 さらにこの活動は神経側のAPPに依存し、APPの細胞外・細胞内どちらの領域も必要であることも明らかになった。APPの細胞内領域はMint1やCaskと複合体を形成し、対応するSynCAM配列でも代替可能だった。
これらのvitroやvivoの研究成果により、APPがシナプス接着分子(adhesion molecule)であることが明らかになった。研究グループは、transsynapticなAPPの相互作用がシナプスの機能を調節しており、APPの接着分子としての機能が阻害されることがシナプス障害やAD病理につながるのではと主張している。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-09-04 23:34 | 論文

最新情報

Nature 460, 632-636 (30 July 2009)
Presenilins are essential for regulating neurotransmitter release

プレセニリン変異は家族性アルツハイマー病の主な原因で、プレセニリン活性の欠損やアミロイドβの蓄積がシナプスを傷害し、アルツハイマー病理につながると考えられている。
しかし具体的にどうシナプス障害が起こるのかよくわかっていなかった。

筆者らは遺伝学的に前シナプス(CA3)あるいは後シナプス(CA1)の神経細胞においてコンディショナルにプレセニリンを不活性化した。すると前シナプスでプレセニリンを欠落させた場合にのみLTP減少、シナプス可塑性も変化。
open-channel NMDA (N-methyl-d-aspartate) 受容体のアンタゴニストである MK-801を使ってグルタミン酸の放出を測定→前シナプスでプレセニリン不活性化のときのみ減少。
ほかにも、ER内Ca2+貯蓄をなくすthapsigarginや、貯蓄からの放出を阻害するリアノジン受容体阻害剤などで、前シナプスプレセニリン不活性化と似たような現象が起きた。

つまりプレセニリンは何をしているのかというと、「前シナプスで細胞内Ca2+放出をmodulate→活性依存的な神経伝達物質の放出の制御」ということのようです。
筆者らはアルツハイマー病の早期の病理として、前シナプスの障害があるのではないかと言っていました。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-07-31 20:23 | 論文

読み会

夕刻ぼーっと外を見ていると、やがて陽が沈み、すると急に空に赤みが消え、あたりがいちめん藍色になる瞬間がある。そのあとは真っ暗になっていくだけなんですが、なにもかもが海の底に沈んでしまったかのような、そんな30分くらいの時間帯が好きです。

Topographic organization of embryonic motor neurons defined by expression of LIM homeobox genes
Cell, Volume 79, Issue 6, 957-970, 16 December 1994

Requirement for the Homeobox Gene Hb9 in the Consolidation of Motor Neuron Identity
Neuron, Volume 23, Issue 4, 659-674, 1 August 1999

「運動ニューロンのアイデンティティ確立にはHb9が必要」
基本的にはHb9ノックアウトマウスの解析。
MNのpopulationを細かく検討した結果、Hb9ノックアウトマウスではHb9を発現しているはずのMNがV2 interneuron様のmolecular featureを獲得していた(=fate conversion)
しかもこれらのニューロンは脊髄から出て、肋間では一部がBTXとmergeしていた(ただし異常な架橋構造などあり)
横隔膜では既報どおりニューロンは来てない
ということでHb9が失われたMNは「MNではない、なにか」になってしまっているらしい。ちょっと怖い。

A novel role for embigin to promote sprouting of motor nerve terminals at the neuromuscular junction
J. Biol. Chem, 10.1074/jbc.M809491200

「embiginの新たな機能:NMJで運動ニューロン終末のsproutingを促進する」
背景として、いちど神経を取り去った筋肉ではNMJ形成のためのさまざまなタンパクを合成するらしく、foreignな神経終末が来てもそれを受け入れてNMJ形成してしまうらしい。
このとき、具体的にどんなタンパクが合成されてるのか?を調べるべくinnervation時/denervation時のmRNAを比較し、その発現レベルに差があるヤツをスクリーニング→候補にembigin
(NCAM様の構造をもっているらしく、それも候補にあがった理由のひとつ)
embiginは一回膜貫通型の構造をとっていて、細胞内ドメインがシグナル伝達にかかわるだろうと考えられている。
そこでembigin全長の過剰発現マウスと細胞内ドメインを欠いたembigin過剰発現マウスを作出、解析
→前者では終末のsproutingが起こり、後者では起こらなかった
→siRNAのノックダウンにより終末のretractionが起こる、NCAM-/-で増悪
まとめとして、embiginはNCAMのmuscle-nerve間接着を増強させていると。


また助教から仕事が降りてきたのでとうぶん忙しくなりそうです。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-06-10 23:51 | 論文

シュワン細胞分化の下流シグナル

UNIQLOCKを導入した。
ユニクロ大好きですから。


Calcineurin/NFAT Signaling Is Required for Neuregulin-Regulated Schwann Cell Differentiation
Science 30 January 2009:
Vol. 323. no. 5914, pp. 651 - 654
「Calcineurin/NFATシグナリングがシュワン細胞の分化に必要」

今までに知られていた事実;
・NRGやErbBのノックアウトマウスでシュワン細胞が死んでいることから、NRG→ErbBでシュワン細胞の増殖とか生存が調節されているようだ
・Ca influx上昇→Calcineurin (=phosphatase)→NFATのリン酸化解除→NFATが核内に移行・転写制御
①CalcineurinのB1サブユニット (CnB1)をneural crestで落とした(wnt creマウスとのかけ合わせ)マウスを作出
→DRG cocultureにおいてCnB1のphosphatase活性が失われた(NFATのリン酸化解除されず)
→さらに神経をみるとaxon/bundleの比率が落ちる
→myelinationにかかわるタンパクのレベル落ちる
→シュワン細胞自体の生存は正常レベル
→nestin creだとこれらの異常は見られない
ということでシュワン細胞のcell autonomousな影響で、myelinationに障害が出ている
②転写制御をくわしく
NRG刺激によりNFAT promoterが動く(レポーターアッセイ)
さらにNFATのnuclear partnerを探した→Sox10だ!(affinity column→MS)
NRG刺激によるKrox20 MSEの活性上昇がSox10共存によりさらに高くなる(=シナジー効果)、しかもP0 promoterも動く→direct/indirectな調節機構があるっぽい
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-06-09 22:59 | 論文

読み会

Nat Neurosci. 2007 May;10(5):615-22. Epub 2007 Apr 15
Astrocytes expressing ALS-linked mutated SOD1 release factors selectively toxic to motor neurons.

ALSは運動ニューロンが死んで、最終的に呼吸困難などで死亡する難病。
家族性ALSの原因のひとつSOD1変異は、どの細胞で、どのように悪さをしているのか。これをvitroで調べた。
Jessell博士の「運動ニューロンが光る」Hb9GFP tgマウスを用い、
脊髄由来のprimary MN (PMN)、ES細胞由来のMN (ESMN)で検討。
MNそのものに変異を入れても細胞が小さいなど、mildな変化しか起こらない。
ところがastrocyteに変異を入れて、MNとcocultureすると生存率がぐっと下がる。
astrocyteそのものではなく、その培養上清をMNにかけても生存率が下がる。
この毒性はMN特異的で、interneuronなどの生存率は下がらない。
さいごに、MNの細胞死はBaxのinhibitorで抑制できる→caspase dependentなアポトーシスか?
という感じ。


Nature 410, 1057-1064 (26 April 2001)
Distinct roles of nerve and muscle in postsynaptic differentiation of the neuromuscular synapse
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-06-03 23:51 | 論文

当日はすらすら書ける

Mくん
C2C12とMNに分化させたES細胞を仕切りに分けて培養、その後仕切りを取り去る→神経がc2c12に向けて軸策を伸ばし、NMJ形成、筋肉の収縮が見られた。(じっさいに収縮している映像があった。気持ち悪かった)
これを脊損の患者さんの脊髄に移植すれば治療できるかもしれない。
問題は、脊髄に移植したMNがaxonを伸ばさないこと。
これにはmyelinが関係しているようだ。(阻害剤の投与→伸長)

Oくん
先週にひきつづきintegrin b1 を神経・筋肉それぞれ特異的にノックアウトしたconditional knockout mouse (cKO mouse)のphenotype解析。
まずはnestin creとの交配によるnestin Itgb1 cKO mouseの解析から。
MN axonの到達やAChR cluster, Itgb1以外のbasal lamina 構成因子、GFAP (Schwann), Synaptophysin (pre)も正常。→ようは異常なし。
つづいてHSA Itgb1 cKOの解析。
こちらは発生が進むにつれ異常が顕著に。
axonはAChRをスルーして伸び放題。
AChR clusterもどうやらmicro clusterのまま。
in vitroでも、agrin投与によるAChR cluster形成が弱い。

助教
JN最新号。
IBMという病気があるらしい。知らなかった。
これは老年性の病気で、筋肉にAβ (とくにAβ42)が蓄積することが知られ、症状はたしか運動障害。
いわば「筋肉のアルツハイマー病」。
これをアルツハイマー病同様、passive immunizationで治療しようという方針。
いきなり人間でやるのはまずいので、まずはモデルマウスでの検討。
モデルマウスはさまざまだが、今回使ったのはc100過剰発現マウスとγ secretaseに変異が入っているマウスを掛け合わせたマウス。
これによって全身にAβ42が大量に産生することになり、じっさいのIBMと同様の所見を得た。
たしかAβ-MAPというAβの塊を注射して抗体をつくらせる。
この技術をつかって同様にIBMモデルマウスに免疫すると、IBM様の症状が有意に回復した。
あとoligomerで悪化。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-05-20 21:14 | 論文

読み会

Oくん「みんなでこれから飲み会に行くのかと思いました」

JN 24 8181- (2004)

Cell 110 385- (2005)

Neuron 52 293- (2006)
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-05-19 09:41 | 論文

読み会

自分 collagen XVIIIとLH3のglycosyltransferase活性について (Neuron 2006)
motor neuron (MN)伸長異常を示すdiwankaの原因遺伝子がlysyl hydroxylase (LH)3であることを解明
1.まわりのECMが悪いのか?
→diwankaではコラーゲン (col2)の局在がおかしくなる
→MN伸長のガイド役を果たすECMでは3層構造のうちコラーゲンだけが見当たらなかったが他は正常
2.MN伸長そのものが悪いのか?
→LH3の局在はMN伸長直前のadaxial cellにあった
→しかしLHファミリーのLH1, LH2も発現→LH3だけが持つユニークな機能?
→LH3だけがglycosyltransferaseをもち、これがあればdiwankaをレスキュー可能
→glycosyltransferaseの基質としてcollagen XVIIIがある
ということで後者なんじゃないかという主張。

Mくん (MCB ?)
ノックアウトマウスをつくるとき、相同組み換えを起こしてtarget alleleをヘテロにもつES細胞がもとになる。
しかしこのヘテロのES細胞を飼いつづけるとtarget alleleをホモにもつ細胞もできるらしい。

助教 いろんな論文から網羅的に。MN死について。
<逆行性の軸索輸送の障害は運動ニューロン死をひき起こす>
運動ニューロンにおいて逆行性の軸索輸送を担当する dynein/dynactin複合体の一方の要素であるdynactinのサブユニット、dynamitin tg mouse
→10ヶ月を過ぎた頃から特に下肢の筋力低下が目立ち始め、MNおよびMN axonの減少(Neuron 34:715-27, 2002).
ALSに類似した遺伝性の運動神経疾患を有するアラバマ州の大家族において dynactinのp150Glued subunitにミスセンス変異(G59S)の発見(Nat Genet 33; 455-456, 2003)
ただし、dynactin遺伝子変異がなぜ運動神経だけに影響を与えるのかは不明。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-05-11 22:54 | 論文

読み会

自分はMCB 2005から
AP-2 μ2サブユニットのノックアウトマウスはembryonic lethal (E3.5までも生きられない)
→cell survivalに必要だろう
一方へテロは元気。AP-2 complexのμ2サブユニットおよびαサブユニットでともにタンパク量が落ちているが半減とまでは行かない→complexが不安定になっている、なんらかの代償機構
CD63を用いたendocytosisの評価も野生型と変わらず。

Mくんは・・・なんだっけ
神経細胞の軸索におけるmRNAの分布をマイクロアレイで見た、という報告。
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# by 5-gekkostate-3 | 2009-04-30 22:46 | 論文

動物の社会性行動を研究中。実験の待ち時間に書きます。


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